わたしの映画遍歴

最近インテリぶって政治の話をしてきたわけですが、ちょっとそういう固いテーマではなく趣味のテーマで真面目に話してみようかなと。

 

わたしは趣味があまりなく、今までいろいろ手を出してはすぐ飽きるの繰り返しで30年生きてきました。

 

その中でわりと続いている趣味が映画鑑賞かなと思っています。

 

子供の頃はよくハリーポッターとかポケモンとか観ましたが、あまり記憶には残っておらず。

 

中学生の頃に友達と三池崇史監督の「クローズZERO」を観たのですがそこでは映画そのものにはハマりませんでした。


正直部活の仲間から誘われて暇つぶしについていったからというのはありましたが。

 

まさかこの時、この三池崇史監督の作品、しかもクローズZEROとはまるで違うおどろおどろしい作品にハマるとは当時厨房のわたしは思いもよりませんでした笑

 

月日が流れて高校2年生。

 

わたしはもともと日本史が好きで、特に大河ドラマでよく観ていた司馬遼太郎さんの歴史小説にハマっていました。


特に「坂の上の雲」はつい先日までちょんまげをしていた人達が明治維新と欧米列強渦巻く大波の中で懸命に抗い、ついに大国ロシアを破って文字通り坂の上の雲を掴む人達の群像劇で胸が熱くなりました。

 

そういった理由から読む本も城山三郎の「落日燃ゆ」だとか、大岡昇平の「レイテ戦記」のような歴史小説が多かった記憶があります。


合間に三島由紀夫とか夏目漱石とか大江健三郎とか安部公房とか坂口安吾とか読んで何となくかしこぶっていた時代でもありました…

 

でも今思い返せば高校、大学の頃は本を読んでいたし、その頃から友達がいなかったのでひとりでつらつら書いていたブログを見るとやはり当時の方が頭がよかったなと思います。

 

やはり読書量と頭の回転は比例します。


今度そのことも書きます。


自責の念を込めて…

 

長々脱線しましたが、わたしの高校では高校2年生で文系と理系に分かれます。

 

わたしは日本史と古典、現代文が大好きで、反対に数学や理科は何度勉強しても赤点ギリギリしか取れなかったので必然的に文系に進みました。

 

その時に出会ったのが日本史の井石先生という当時30代そこらの女性の先生でした。

 

まだお子さんが小さくて、よく子供の話を嬉しそうにする先生でした。

 

また、本当に歴史が好きな方なのがすごく伝わる人なので、周りが爆睡している午後の授業だろうが何だろうがいつも楽しみに授業を受けていました。

 

その先生がとてもキレイな人だったから楽しみに授業を受けていたのもあるというのは秘密です。

 

よく授業終わりなど先生と歴史の話をするのがとても楽しかった。

 

ある時、授業も急足になる近現代史の授業で先生が「満州国の溥儀さんは映画にもなっているので興味がある人は見てみてね」みたいな話をされていました。

 

当然わたし以外全員寝ていたか興味もなく聞き流していたと思います。

 

わたしはもうその映画のことが気になって授業終わりにいつものように先生に質問をしました。

 

すると先生は「ラストエンペラーという映画で当時すごく人気だったんだよ。坂本龍一さんも出ていておもしろいからTSUTAYAさんとかで探してみて」と教えてくださいました。

 

当時諸事情で部活も辞めていたわたしは授業が終わると一目散に自転車を飛ばして学校の最寄駅の近くにあったTSUTAYAで「ラストエンペラー」を借りてきました。

 

この映画との出会いがわたしを映画という底なし沼に引き摺り込むキッカケになろうとはつゆ知らず。

 

家に帰って親のポータブルDVDプレイヤーを拝借して深夜にこっそり見たその映画は圧倒的なスケールと物語の濃さ、ラストシーンのキレイな終わり方と全てがわたしのど真ん中であり、鑑賞後も圧倒されてしばらく呆然としてしまいました。

 

それからはTSUTAYAに行って何となく知ってる人の映画を観るのがたまの贅沢になりました。

 

水曜どうでしょう」にハマっていたのでミスターこと鈴井貴之さんの「銀のエンゼル」や「River」を借りたり。


以前小説で読んだ辺見じゅんさんの「男たちの大和」を観たり。


当時は邦画ばかり観ていた記憶があります。

 

恐らくこの頃は何となく洋画のよさが分かっていなくて「字幕を追いかけながら観るのはめんどくさいしかといって吹替はその人が喋ってない感じがして嫌だしそれなら洋画はいいや…」という子供らしい理由だったような気もします笑

 

ラストエンペラー以降で洋画を観たのは正確にいつどこで何の作品だったかは覚えていません。

ですが、大学生くらいの頃にある2作品をTSUTAYAで借りた時に洋画というか映画がいよいよ面白いと思えた作品に出会いました。

 

それがクエンティン・タランティーノ監督の「パルプフィクション」と「キルビル」でした。

 

当時軽音サークルに入っていたのですが、同級生にBOØWYが大好きなギタリストがいました。

 

彼がよくサークルの部室で布袋寅泰さんのギターリフを弾いていて、その時にあるリフがカッコよくて「それは何の曲?」と聞いたら「名前忘れたけどキルビルって映画の曲じゃなかったかな」と言われました。

 

ファンなのに名前忘れたんかい!というツッコミを入れつつも「キルビルか…」と頭の中にあったわたしはこの日も大学が終わりバイトも終わった夜にまたもTSUTAYAに行って「キルビル」を借りようとしました。

 

しかし当時は旧作5本で1000円か何かの企画をやっていたのでそれならあと4本借りるかとパッと横を見た時に同じタランティーノ作品の「パルプフィクション」が目に入りました。

 

パッケージのミア(ユマサーマン)がタバコを片手に寝そべってこっちを見ているパッケージに何か惹かれて借りてきたその作品がまさにわたしの中のベスト映画になりました。

 

今まで観てきた映画は起承転結が分かりやすく何となくオチも分かりやすいものが多かった。

 

ところがパルプフィクションは時系列もバラバラで話もバラバラなのに最後にパズルのピースのように全てが繋がって「そういうことなのか」と圧倒される作風で強烈なインパクトを食らいました。

 

逆に「キルビル」はストーリー自体は分かりやすいのですが、和洋折衷がおりなす美しさや面白さに魅了されました。

 

そしてどちらも主演はユマサーマン。


なのに当たり前ですが全く違う顔を見せる彼女。
ジアンビューティな雰囲気を醸し出すリューシーリュー。


そして大事なシーンで存在感を発揮する千葉真一
同じくまだ若手ながら味のある演技を見せた栗山千明

 

この2作品、というよりもクエンティン・タランティーノ監督の魅了で映画に本格的にハマったといっても過言ではないかもしれません。

 

ただ、この時はまだ自分の中で好きなジャンルが定まったわけではなかったのですが、その後借りてきた映画によってわたしの中で「社会派映画とホラー映画」という好きなジャンルが確立された映画に出逢います。

 

それが「バトルロワイアル「フリージア」実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」でした。

 

まず「バトルロワイアル」は「キルビル」を観た時に気になった栗山千明さんが出ている映画をネットで探していた時にヒットしました。

 

主演は当時すでに「デスノート」や「カイジ」などに出演して人気だった藤原竜也さん。

 

他にも今や国会議員の山本太郎さんやこれ以降その演技にハマった安藤政信さん、柴咲コウさん、そしてわたしが今でも大好きな俳優前田亜希さんなど錚々たるメンバーが出ていました。


そして特に尊敬する日本人映画監督の北野武さんも特別出演しており、監督は深作欣二監督。

 

内容は「国が崩壊しかけて自信を無くして子供達を恐れた大人達が作ったBR法という法律のもと、ランダムで選ばれた中学3年生の1クラスが無人島で最後の1人になるまで殺し合いをさせられる」という映画。

 

グロシーンや残虐シーンも多々あり、公開当時は国会を巻き込んだ論争になったそうです。

 

映画を観たあとは「なんかすごいもん見た…」という小並感といった感想を持ったのですが、深作欣二監督が気になって調べていたところこの映画に関するインタビュー動画を発見したのです。

 

そこで語られていたのは深作監督の子供の頃の戦争体験でした。

 

学徒動員で街の軍需工場で働いていた深作少年はある日空襲で目の前の友達が腕が吹き飛び足がちぎれて絶命するサマを見せつけられます。

 

さっきまで談笑していた友人が、ほんの一瞬でバラバラになって生き絶えるその描写は平和な世の中に暮らす我々には想像もつかないでしょう。

 

作監督の映画表現はそこが原点であり、彼の中にある強烈な反暴力、反権力の姿勢と大人は嘘つきで綺麗事を並べる生き物だという意思だと思います。

 

まさに「バトルロワイアル」は学徒出陣で学生生活道半ばで軍隊にとられたり、赤紙一枚で無理やり戦争に連れていかれて大人達に死ねと言われた若者たちの怒りの声にならない声が深作欣二という天才の手によって声をあげているのだと感じました。

 

随分経ってから観た「仁義なき戦い」もそうですが、深作欣二監督は過激な暴力を生々しく描くことによってそうした反権力、反暴力、反戦平和の精神を訴えたのだと思いました。

 

同じような感想を持ったのが若松孝二監督の「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」でした。

 

よく昭和の重大事件などで出てくるあさま山荘事件の様子は何となく観たことがあったし、連合赤軍が当時流行っていた新左翼の人達ってことは分かっていましたが、その裏で赤軍派と革命左派が警察の捜査で追い詰められ、それでも革命という理想のためにまとまろうとしたにも関わらず、最後は人間の嫉妬、妬みといった卑しい感情と猜疑心で「総括」の名の下に同志を殺害していく「山岳ベース事件」を起こすに至る崩壊の過程を初めて目の当たりにしました。

 

そしてこの時によくYouTubeや本で拝見していた西部邁が昔新左翼運動に身を投じていて、それでも左翼活動をする中でだんだん左翼の嫌な部分を見過ぎでフェードアウトしたという話を思い返していました。

 

たしかに当時、ソ連や中国に憧れて、北朝鮮を地上の楽園と信じて世界同時革命を起こすと燃えていた若者達の信念は冷戦の終結で間違いだったと証明されました。

 

それでも、三島由紀夫全共闘の若者達に「わたしは諸君の思想には共感しないが、その熱量だけは信じます」といったように、彼らのその熱量はとんでもないものを感じました。

 

そして、この少し前に見たドキュメンタリー映画天皇ごっこ 見沢知廉 たったひとりの革命」の中で見沢知廉を回想した活動家の雨宮処凛さんが語っていた「今の若者が半径5メートルくらいの中でガス抜きをしているが、国家に本気で喧嘩を売ってみろよみたいなことを言われているような…」と語っていたのを思い出しました。

 

今の若者はわたしも含めてみんな大人しい。
よく言えばお利口さんなのだが、エネルギーというか牙を抜かれている。


でも昔の若者達はたとえそれが誤りだったとしても本気で権力にケンカを売っていた。

 

それは国家権力に限らずもっと小さなコミュニティでもそうだったのだと思います。

 

そうしたエネルギーを若松孝二監督の作品からも感じました。

 

「フリージア」に関しては本当にたまたま手に取って借りたのだが、この映画で三浦誠己さんとつぐみさんの演技にハマりました。

 

また、主演は今や有名俳優である玉山鉄二さんで、同じく今や結婚しただけでロスが起きる西島秀俊さんも出演していました。

 

この映画も近未来の日本で死刑の代わりに「仇討ち法」が制定されている日本を舞台にしたマンガを原作にする社会派映画であるが、彼らの関係性はひと昔前におこなわれた核実験で人生を壊された若者達が大人になって奇妙な再会をする話です。

 

ここでも大人の都合で子供の人生が壊されていきます。

 

そういった若者の怒りを拾い上げてくれる監督にこの時はハマっていた気がします。

 

当時はまたもや邦画にハマっていて、やはり観ていたのは例えばグスーヨン監督の「ハードロマンチッカー」だったり、阪本順治監督の「カメレオン」だったり、崔洋一監督の「血と骨」、薗田賢治監督の「狂気の桜」、園子温監督の「愛のむきだし」「紀子の食卓」あたりに感銘を受けた記憶があります。

 

また、ホラー映画というかグロ系の映画で最初にハマったのはやはり「SAW」だった気がします。

 

そこから日本ホラーの金字塔「リング」や「呪怨」を観たり、洋画だと「13日の金曜日」や「エルム街の悪夢」なんかの名作を観ていた。

 

でも映画館で観るようになったのはずっと最近で、最初に映画館で観たのは社会人になった後の2017年か2018年だった気がします。

 

たしか白石和彌監督の「虎狼の血」だった気がします。

 

ちなみに「虎狼の血」はハマりすぎて2作目も映画館で観ました。

 

その次にスクリーンで観たのはまた1年後になるのですが、たしか「天気の子」だった気がする。

 

大人になってアニメーションの映画を観たのは久しぶりだった。
これに関してはまあ面白かった。
これ以上聞かないでください…

 

2020年以降はしばらくコロナ禍でいけなかったが、2020年後半から映画館で観ることにハマった。

 

そのキッカケはポンジュノ監督の名作「パラサイト 半地下の家族」、ドキュメンタリー映画である「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」、手塚眞監督、手塚治虫先生原作の「ばるぼら」、同じく手塚眞監督で原作はわたしが学生の頃ハマっていた作家坂口安吾の「白痴」であった。

 

やはりわたしを作っているのは邦画だったようです。

 

腐っても日本人なんだなと思いました。

 

映画=ヨーロッパやアメリカ文化が強いので、わたしも一時期「邦画なんてクソ。やっは洋画だよ」と思っていましたが、邦画も意外と無名の監督や若手監督の作品が面白かったりします。

 

わたしが注目しているのは「田辺・弁慶映画祭」や「MOOSIC LAB」に出品されている作品です。

 

この映画祭で藤原季節さん、根矢涼香さんなどを知り、野本梢監督のような若手実力派の監督も知りました。

 

2020〜2022年はわりと映画館も行きましたが2023年はあまりいけていません。

 

ですが、今年も時間を作って映画館で観たいと思っています。

 

主に邦画は「映画館でしか、しかもミニシアターでしかやらないような若手監督や無名監督の作品」
洋画や韓国、中国その他外国映画は特に縛りなく観るようにしています。

 

でもやはり原点は日本のバイオレンスだったり社会派映画であり、ラストエンペラーで観た歴史映画であり、パルプフィクションやここで急に名前を出しますがデヴィッド・フィンチャー監督の「ファイトクラブ」のようなドンデン返し系の映画な気がします。

 

そして長々と書いて結論は映画っていいぞっていう一言で終わる感想になります…笑

 

でもやっぱり突き詰めると映画は戦後まもない頃、何もない時代から人々を魅了し続けてきた最高の娯楽です。

 

今の時代、サブスクも増えてだんだん映画館に行く人も減ってきていますが、サブスクのよさもありつつやっぱり映画館で観る映画は最高です。

 

特に最近はTikTokYouTubeショートの影響で映画に耐えられないという人もいるようですが、ぜひ一度でいいから映画館で映画を観てほしいです。

 

もしかしたら世界が変わるかもしれません。

これを機に映画好きな人たちともっと交流できたらと思い、こんなノート書いてみました。